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人間社会科学研究科人文学プログラム/文学部欧米文学語学・言語学コース

言語学研究室

所蔵品Collection

楔形文字粘土板コレクション

 広島大学言語学研究室は、約400点にのぼる楔形文字粘土板を所蔵していて、これはわが国最大の粘土板コレクションです。内容的にも重要で、コレクションの学術的、骨董的価値は驚くべきものがあります。

 これらの殆どは、1980年に吉川守先生をつうじ、岩崎旺太郎氏によって寄贈されたもので、多くは、シュメール・ウル第三王朝時代(前21世紀)の諸都市の公的書庫から出土した行政・経済記録です。他に、ヒッタイト語、古バビロニア語、ウガリト語で書かれた文書も含まれています。

 諸事情により、全部の実物写真や詳細カタログを公表できませんが、かつて学外での展示を行ったこともあります。





 この粘土板は、広島大学文学部『岩崎コレクション』の一つで、世界的にも極めて希な大型の粘土板で、表裏14欄からなる。
 第1欄および第14欄の一部が欠落しているが、保存状態は極めて良好である。
 奥書によれば、”ハルシ市、フ(ム)ル市、キマシュ市が破壊された都市”の”麦刈りの月”すなわち、シュルギ王の治世46年1月に作成された記録であり、最高責任者として、ウンマ市のエンシ(地方長官)、ウル・リシの名が記されている。
 内容は、シュメールの都市間を粘土板に書かれた指令をもって往復する使者や、外国からの賓客、従者などに対する支給品、例えばビール、各種の粉、葦束などの1年間の支出を集計した会計録である。
 言うまでもなく、粉は主食としてのパン用に、葦は薪として使用されたと思われる。
 この種の集計記録は従来公刊されたことがなく、今までに知られていない都市名も多数記載されているため、ウル第三王朝時代の行政の全体像を把握するための貴重な資料である。





















ハムラビ法典 (原寸大の複製)

 バビロンの第一王朝第6代の王ハムラビ(在位:紀元前1729-1686)の編集した法典(但し、王の呼称、在位期間、及び「法典」という解釈には諸説あり)。玄武岩の円柱、高さ2m40cm。通説によれば、太陽神シャマシュの神殿に捧げられたもので、最上部には、シャマシュ(右)とその前に立つハムラビ王(左)が見える。内容は楔形文字(アッカド語)で書かれ、前文・法文・後文の三部構成。280条に及ぶ法文は、訴訟手続・処刑の方法・高利貸の権限・畑と果樹園の貸借・奴隷の売買など、現在の民法・刑法・商法・訴訟法の領域を含む。「復習法」として知られる「目には目を」の文言が刻まれている条文は、裏面中央部にある。
 バビロンはイラクの首都バグダッドの南方100余キロの地点にあった古都である。紀元前12世紀頃、イラン南部に居たエラム人がバビロンに侵攻し、この石碑を戦利品として当時の首府スサに持ち帰った。1901年フランスの調査隊がスサを発掘、これを発見。現在オリジナルはルーブル美術館に所蔵されている。






☆「もし自由民が自由民の一員の目を傷つけたならば、彼の目を(人々が)傷つける」
                                 [RXVII, § 196, II. 45-49]



Dante Alighieri "Divina Commedia" 稀少本

 イタリア・フィレンツェ出身のDante Alighieri(1265 - 1321)の代表作であるDivina Commedia"『神曲』は、イタリアのみならずヨーロッパ文学最大の古典である。地獄偏(Inferno)、煉獄偏(Purgatorio)、天国編(Paradiso)の三部で構成される、長編叙事詩である。文体は、三行をひとまとまりとする「三行詩節」(terza rima)で各行は11音節からなり、「三行詩節」ごとに脚韻のパターンがある。当時の古典作品としては、ラテン語で書かれるのが一般的であるが、この作品は、現在のイタリア語の基礎となっている当時のトスカーナ方言(俗語)で書かれており、ダンテはイタリア語の父とも称される。
 暗い森の中に迷い込んだダンテ自身が、そこで出会った古代ローマの詩人ウェルギリウス(Publio Virgilio Marone: BC70-BC19)に導かれ、地獄、煉獄、天国を回るという内容。
 有名な冒頭の6行は、以下のようになっている。

 Nel mezzo del cammin di nostra vita
 mi ritrovai per una selva oscura
 che la diritta via era smarrita.
 Ahi quanto a dir qual era e cosa dura
 esta selva selvaggia e aspra e forte
 che nel pensier rinova la paura!

(すべての稀少本は、この冒頭部分です)

◎ Il codice Trivulziano 1080 della Divina commedia riprodotto in eliocromia sotto gli auspici della Sezione milanese della Societa dantesca italiana nel sesto centenario della morte del poeta, con cenni storici e descrittivi di Luigi Rocca Ulrico Hoepli, 1921. <BB00878871>








◎ Il Dante Urbinate della Biblioteca vaticana (Codice urbinate latino 365) ; 1, 2
Biblioteca apostolica vaticana, 1965. -- (Codices e Vaticanis selecti phototypice expressi ... Pauli VI pont. max. ; v. 29). <BB00878260>







◎ Dante estense : Cod. a.R.4.8 (Ital. 474)/Biblioteca estense di Modena
commentario di Ernesto Milano ; [Facsimile], [Commentary]. -- Priuli & Verlucca, 1995. <BB00998178>





クルスカ辞書 (Vocabolario degli Accademici della Crusca)

ヨーロッパでもっと古いアカデミーであるクルスカ学会(Accademia della Crusca)は、1583年にイタリア・フィレンツェで設立される。当時、標準イタリア語に関する言語論争があり、14世紀トスカーナ方言を基盤とする文学語を標準語とする立場をとったクルスカ学会は、1612年に最初のイタリア語辞書であるVocabolario degli Accademici della Cruscaを刊行する。これを機に、現在においても標準イタリア語は、ルネサンス時代のダンテ、ボッカチオ、ペトラルカのトスカーナ方言による文学語が基盤となる。
 本書は、1729-1738年にフィレンツェでDomenico Maria Manniによって出版された全6巻の第W版の辞典を、1741年にFrancesco Pitteriが全5巻に要約し、ヴェネツィアで再版した貴重なものである。







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